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SEALDs(シールズ)の奥田愛基さんへの応答 [日本・現代社会]

SEALDs(シールズ)の奥田愛基さんへ

SEALDsのHPの文言をめぐり、私が拙ブログに書いた批判について、facebook上にコメントをいただき、ありがとうございます。

SEALDs(シールズ)は大学生を中心とする運動であるにもかかわらず、奇妙なことに、私の批判に対して応答・反批判・罵倒してきたSEALDsの支持者たちは、ほとんどが大学生とは思われない年齢の人ばかりだったので、驚いていました。ようやく、SEALDs本来の大学生メンバーであり、HPの声明文を書いた一人である奥田さんから応答をいただい、大変喜んでおります。以下、大きく三つの問題について述べさせていただきます。

1、旧日本帝国のアジア侵略責任の問題

繰り返し述べてきたように、東アジアに平和的な秩序を打ち建てるための大前提は、かつて日本帝国が犯したアジア侵略の責任を今の日本国家が真摯に引き受け、清算することです。したがって日本の平和運動は、日本政府が過去の侵略責任を引き受け清算するよう、常に圧力をかけ続けねばなりません。それを怠る限り、日本の平和運動は東アジア各国の人びとから真の信頼を得ることはできません。

SEALDsの声明文は「対話と協調に基づく平和的かつ現実的な外交・安全保障政策を求めます」と述べながら、日本国の侵略責任問題をどのように追及してゆくかについては一言も触れていません。にもかかわらずSEALDsが「先の大戦による多大な犠牲と侵略の反省を経て平和主義/自由民主主義を確立した日本には、世界、特に東アジアの軍縮・民主化の流れをリードしていく、強い責任とポテンシャルがあります」と主張することは、東アジアの平和に何らつながらないばかりか、そうした日本人の傲慢な独善性に対する、アジアの多くの人びとの反発を呼び起こすことでしょう。

私がそのように断言するのは、私が中国の東北部に住み、皮膚感覚としてそれを感じるからです。日本に住む日本人が、かつて日本に侵略されたアジアの人びとの気持ちを理解するには、多くの想像力が必要でしょう。

私の住んでいる長春は、1931年に日本軍が中国東北部を侵略して傀儡国家「満洲国」をでっち上げ、その国都として「新京」と改名された都市です。新京市の建設のため、多くの地元農民の土地が暴力的に奪われました。日本は満洲国に32万人の日本人開拓移民を送り込みましたが、彼らが移住した土地は、もともとそこに住んでいた中国人の農地を奪い取ったものでした。そうした日本の暴虐に怒って抗日運動を起こした人びとは徹底的に殺戮され、あるいは人体実験の材料として生きたまま身体を切り刻まれました。現在でも、そのことを知らない中国人はまずいません。

今東アジアで注目されている慰安婦問題を含め、大日本帝国のアジア侵略責任を公式に日本政府が引き受けたことは、戦後七十年の間一度もありません。この問題について、SEALDsの声明文はなぜ一言も触れていないのでしょうか。

私の意見に対して、SEALDs支援者たちから多くの反論が寄せられましたが、私が最も重視しているこの問題については、不思議なことに誰ひとりとして真剣に触れようとしません。ただひとり奥田さんだけが、「過去の過ちの清算、真の意味での和解ができる日が、1日でも早くる事を望んでおります」と、この問題にきちんと向き合う姿勢をみせていただけました。

もしSEALDsが東アジアの平和秩序の建設に積極的な役割を果たしたいのであれば、ぜひメンバーの間で討論を行い、SEALDsの公式見解いわば最小限綱領として、日本政府が卑劣にも逃げ続けてきた侵略責任の清算という問題を必ず声明文の中に入れねばならないと、私は考えます。

2、日本の民主主義と沖縄の問題

奥田さんは、SEALDsの学生が30人ほど入れ替わり立ち代り辺野古で座り込みをしてきた事実を教えてくれました。そういうことであれば、沖縄の「復帰」後四十年以上経った今も、日本国の民主主義が沖縄を除外し続けている事実を、SEALDsのメンバーたちが知らないはずはないでしょう。

にもかかわらず声明文には、「戦後70年でつくりあげられてきた、この国の自由と民主主義の伝統を尊重し」、「日本の自由民主主義の伝統を守る」、「戦後70年間、私たちの自由や権利を守ってきた日本国憲法の歴史と伝統」、などとあります。これらの文言を読むと、ここで言う「この国」「日本」からは沖縄が除外されているのではないか、と私は感じざるを得ません。

戦後70年、日本国の民主主義が一貫していかに欺瞞的なものだったかを、現在沖縄で行われている闘いは私たちに突き付けています。SEALDsが沖縄の闘いと真に連帯することを求めるのであれば、現在の声明文は必ず改められねばならないと、私は考えます。

3、韓国人研究者に対するSEALDs支持者による深刻な人権侵害の問題

6月18日、韓国人研究者の鄭玹汀さん(在日コリアンではありません)はご自身のfacebook上に、SEALDsに対する批評文を載せました。その内容は、日本の戦争責任問題や歴史認識問題についてSEALDsの声明文の姿勢を問い、そこに垣間見られる若い世代のナショナリズムについて警鐘を鳴らしたものです。それは日本の社会運動に対し、外国人の視点からその問題点を客観的に指摘した、きわめて妥当な内容の批評です。しかし、鄭さんがこの批評文をfacebook上に載せた直後から、野間易通氏ら多数のSEALDs支持者による一方的で猛烈なバッシングがツイッター等を通じて始まりました。それは鄭さんの文章に対する単なる批判ではなく、誹謗中傷・罵倒の限りをきわめ、彼女の全人格を根本的に否定するものでした。果ては脅迫行為にまで至り、日本に住む外国人としての静謐な生活が実際に脅かされています。深刻な人権侵害といえるでしょう。

鄭さんは、この春に再来日したばかりの韓国人研究者であり、在日コリアンではありません。もちろん日本の政治・社会運動とは何の関係ももっていません。彼女は外国人としての立場から、SEALDsのHPを読んでその客観的な感想を正直にご自身のfacebookに書いただけのことです。ところが、彼女に対してSEALDsの一部支持者たちが加えている誹謗中傷・脅迫攻撃は、恐怖と恥辱を与えることで口を封じ、さらには彼女の研究者としてのキャリアまで粉々に打ち砕くことを目的とするような、悪質で卑劣な暴力そのものなのです。

ようやく日本での研究生活が落ち着いてきたばかりの外国人女性が突然、多くの日本人たちから理不尽な攻撃・脅迫行為を受けたのです。その恐怖と苦悩はいかにひどいものだったでしょう。海外に住む私には、そのとてつもない恐怖がある程度察せられます。

鄭さんには、そんな理不尽な仕打ちを受けるべき何の過失もありません。ただSEALDsの声明文を批評しただけで、野間氏らSEALDsの一部支持者たちから袋叩きに遭ったのです。しかも、彼らによる攻撃は今でも延々と続いています。

SEALDsの声明文の冒頭には、「私たちは、自由と民主主義に基づく政治を求めます」と謳われています。批判を受け取り、議論をもって応答するのは、民主主義社会の最も基本的な原則でしょう。ところがSEALDsの一部支持者たちは、「自由と民主主義に基づく政治」を自ら否定するかのように、鄭さんの批評に対して、それを受けとめることを頭から拒絶し、誹謗・中傷・脅迫という暴力をもって答えているのです。

奥田さん。あなたは、執拗に続いている鄭さんに対するこの深刻な人権侵害を、当然知っているでしょう。あなたを含むSEALDsの中心メンバーが、こうしたやり方はおかしいとはっきり表明しさえすれば、この異常事態はすぐに止むはずです。ところが、あなたがたは今に至るまで、人権侵害を防ぐための行動を何一つ起こそうとしていない。なぜですか?まさか、SEALDsを批判した者・運動の邪魔をする者は、外国人であれ、徹底的に打撃を与えて当然だ、という発想をもっているわけではないでしょう?

日本に暮らす外国人の人権を、本来その擁護者であるはずの社会運動の人びとが、理不尽にも踏みにじるという事態は、いまだかつて目にしたことがありません。しかもそれを、運動の中心にいる関係者たちが容認するならば、日本の社会運動史上まず類例をみない醜悪な不祥事となるでしょう。

たとえいかに「正当」な政治的な目的があったとしても、運動遂行の手段として、一人の善良な外国人の人権を踏みにじることが許されてはなりません。それを黙認するような運動は、決してまっとうな運動とはいえないのです。

奥田さん、そしてSEALDsメンバーのみなさん!野間氏らSEALDsの一部支持者たちによって今も執拗に続けられている人権侵害を一刻も早く止めるため、早急に行動することを私は要請します。

〔後記:一部字句を修正しました。6月26日6:26(北京時間)、7:23(同)〕
〔後記2:一部リンク切れのため、リンク先を変更しました。6月27日14:12(北京時間)〕

〔後記3:「人権侵害」についての補足説明 6月28日2:13(北京時間)、一部字句修正11:27(同)〕
野間易通氏は、鄭玹汀さんを批判するツイッター上の発言を集めたまとめサイトをつくっています。SEALDsの一部支持者によって書かれたこれらの発言のうち、U氏やk氏の発言の中には、鄭さんに対する脅迫および名誉毀損などの人権侵害に当たるおそれがきわめて濃厚なものが多数あります。野間氏はそうした鄭さんに対する脅迫・名誉毀損に当たる恐れが強い発言をまとめただけでなく、被批判者を「間抜け」呼ばわりする題名をつけることによって、それら人権を侵害する発言を批判するどころか支持を示す形で、広くネット上に流布しています。

なお6月28日1時58分(北京時間)現在、U・k両氏のツイッターは非公開設定になっています(二人が自分の発言の不適切さを認識し、自発的に非公開にした可能性があります)。にもかかわらず、野間氏が作成したまとめサイトのために、脅迫・名誉毀損に当たる恐れが強い発言が、現在もネット上の不特定多数に流布され続けているのです。

野間氏は社会運動家として、自己の言説行為(まとめサイト作成なども含む)について、社会公衆に対し特に軽からぬ責任を負っています。

野間氏が本来なすべきことは、鄭さんに対する脅迫・名誉毀損に当たる恐れが濃厚な発言がこれ以上拡散することを防ぐため、自分の作ったまとめサイトを閉鎖することです。しかし野間氏はそれを意図的に怠ることによって、U・k両氏が自分のツイッターを非公開にしたあとも、鄭さんの人権を侵害する彼らの発言を不特定多数が閲覧できる状況に置き、その流布を助長しています。

本文中にある「野間氏らSEALDsの一部支持者たちによって今も執拗に続けられている人権侵害」とは、以上の事実を指します。

長春だより

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