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続・台湾の「サービス貿易協定」反対運動 [中国・労働問題]

再び台湾の「サービス貿易協定」反対運動についての雑感。反対運動の学生たちは、中国資本が大挙台湾に上陸してくることの弊害を盛んに訴えているようだ。

だが現時点での、グローバル資本主義における労働問題としてみた場合、中国大陸に進出している台湾資本の工場における苦汗労働のほうが、はるかに深刻で現実的な問題だ。iPhoneやiPadなど電子機器端末の受託生産で有名な台湾企業「富士康」(Foxconn)が中国各地で展開している工場は、とりわけ「血汗工場」として悪名高い。

同社の劣悪な労働条件に抗議する労働者たちによって、数年前から中国の各地で争議が多発している。2012年10月には河南省鄭州の工場で4000人規模のストが起き、同じ頃山西省太原や広東省深圳では暴動もあった。昨年1月には北京や江西省豊城でストが勃発した。同社工場では労働者の自殺も有名で、昨年4月には鄭州の工場で富士康の従業員二人が、相次いで飛び降り自殺した。その背景として、職場での私語厳禁、違反者への重い罰則など、労働者に対する厳しい締め付けがあることが指摘されている。
http://hunan.voc.com.cn/article/201301/201301250912457214001.html?bsh_bid=186559524
http://news.qq.com/a/20130501/000655.htm

むろんこれらは氷山の一角でしかないだろう。もし中国資本の脅威を口々に訴えている台湾の学生たちが、大陸中国に進出した台湾資本の工場における苦汗労働の問題には口を閉ざすのであれば、それはエゴイスティックな「嫌中」運動と言われても仕方がない。少なくとも、大陸中国10億の民衆は、そのような運動に何の共感も覚えないだろう。

グローバル資本主義に抵抗するためには、世界の民衆が連帯せねばならない。排外的ナショナリズムはそうした連帯を不可能にし、結局運動を敗北へと導くことになる。

日本にも、「実習生」「研修生」といった名目で中国人労働者をこき使う苦汗工場がある。中国に進出した日本企業の労働問題もしばしば起きている。このような、グローバル資本主義がもたらすさまざまな問題についての認識を、各国の民衆が国境を越えて共有し合うことから始めなければならないと思う。

長春だより

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