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収穫の秋、「霧霾」の秋 [中国東北・雑記]

収穫の秋、食欲の秋。とれたてのとうもろこしやさつまいもを焼いたり蒸かしたりする煙や湯気が、長春の街角のあちこちで見られる。リアカーに山と積まれたざくろやみかんの行商を見るたびに食欲をそそられ、つい手を伸ばしてしまう。
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だがちょうどこの時期、とんでもない霧霾(スモッグ)が華北や東北に出現するようになってしまった。五日前、長春市内はひどいスモッグに襲われ、六段階の汚染度(優・良・軽度の汚染・中度の汚染・重度の汚染・深刻な汚染)のうち最悪の「深刻な汚染」となり、大気汚染指数が300を越え、中国全都市の中で最悪となってしまった。
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その後、雨と大風で空気中の汚染物質はいったん洗い流され、昨日の午後も「軽度の汚染」レベルだった。しかし夜になって十階の自室から外を見ると、いつもの眺めと様子が違う!街全体に煙のようなものが低く垂れこめ、街灯の明かりをうすぼんやりと不気味に乱反射している。ネットで大気汚染観測サイトをみると、現在の長春市内の汚染指数は450を超え、PM2.5は377μg/m³(日本での「不要不急の外出を避ける」暫定基準値は85μg/㎥)という「深刻な汚染」レベルに達し、中国全市の中でまたしても最悪数値となっている。

報道によれば、この時期の大気汚染の原因は気象条件のほか、多くの農民が収穫後のわらを燃やすことや、冬季入りの準備として石炭が焚かれ始めたことなどがあるという。しかし、それだけではここ数年汚染が急速にひどくなったことを説明できない。中国で深刻化する公害の背景には、経済活動が活発化する一方、環境コストを本来負担すべき者(工場経営者、資本所有者など)が負担せず、環境悪化のつけを一般庶民に押し付けている、という構図がある。環境問題には明らかに階級問題が内包されているのだ。マイカーの所有者は車内で空気清浄器をフル回転させて大気汚染から自分を守る一方、その排ガスを直接吸わされるのは車を持たない一般庶民である。こういうからくりを市民たちは薄々気づいているからこそ、政府・支配層の無策に対する怒りは年々増幅する一方だ。

汚染が深刻なレベルの日も、マスクを着用する市民は少ない。それは大気汚染の害を知らないからではなくて、PM2.5にたいしてマスクがあまり役に立たないという無力感からだろう。私も昨年からマスクをするのをやめている。自衛策は外出を控えることだけだが、通勤者・労働者にとってはそんな悠長なことを言ってもいられず、皆黙々と歩いている。やり場のない怒りにため息をつきながら。

長春だより

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