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安倍政権の動向をめぐる『中国社会科学報』のインタヴュー [日中関係]

中国社会科学院の発行する『中国社会科学報』(第592期、2014年5月7日)に、安倍政権および政権批判をめぐる日本政治の動向について、私にインタヴューした記事(「安倍政権の右傾化、日本民衆からの批判に遭う」)が掲載されました。

安倍政权右倾化遭日本民众批判——访东北师范大学教授大田英昭(中国社会科学在线)

以下、インタヴューの全文と日本語訳を転載します。

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  《中国社会科学报》:请问您怎么看待安倍政权?安倍政权与日本右翼势力、右翼意识形态是怎样的关系? (『中国社会科学報』記者:安倍政権をどのように見ていますか?安倍政権と日本の右翼勢力、右翼イデオロギーとはどのような関係にありますか?)

  大田英昭:安倍政权在2012年12月根据日本众议院议员总选举成立。我认为,这一选举结果并未如实反映日本选民的政治意识。以小选举区制为中心的日本众议院议员选举制度,不能够忠实地将国民的舆论反映在各政党的议席分配上。
(安倍政権は2012年12月の衆議院議員総選挙で成立しました。しかしこの選挙結果は、日本の有権者の政治意識をそのまま反映しているわけではないと考えます。小選挙区制が中心の日本の衆議院議員選挙制度では、国民の世論がそのまま各政党の議席配分に反映されないのです。)

  热烈支持安倍政权的是右翼势力。安倍政权为了博得他们的欢心,施行了许多基于右翼意识形态的政策。一是将“爱国心”强加给学生的教育政策,二是以军事大国化为目标的国防政策。
(安倍政権を熱烈に支えているのは右翼勢力です。安倍政権は彼らの歓心を得るために、右翼イデオロギーに基づくさまざまな政策を行っています。愛国心を強制する教育政策がひとつ。もうひとつは軍事大国化を目指す防衛政策です。)

  在历史问题上,安倍也反复根据右翼意识形态发言和行动。1995年,日本政府对曾经的殖民统治和侵略战争发表了表达反省与歉意的“村山谈话”。对此,安倍去年4月做了表示轻视的发言,提出“侵略定义未定论”,并在去年底不顾众多反对意见参拜靖国神社。这些发言与行动也是为了讨好右翼势力。
(歴史認識問題において、安倍首相は右翼的イデオロギーに基づく発言と行動を繰り返しています。1995年、第二次大戦前の日本の植民地支配や侵略戦争に対して日本政府は公式に反省とおわびを示した「村山談話」を発表しました。ところが安倍首相は昨年4月にこれを軽視する発言をし、「侵略の定義は定まっていない」などと述べています 。さらに彼は、昨年末に多くの反対を押し切って靖国神社を参拝しました。これらの発言と行動は、自分の支持基盤である右翼勢力を喜ばせるためのものなのです。)

  日本右翼意识形态的根据是赞美近代日本的侵略战争和专制天皇制的历史修正主义,企图否定战后的国际、国内秩序。基于这一思想的安倍政权的极右外交政策,使东亚国际秩序陷于不安定,是非常危险的,理所当然受到亚洲各国的批判。安倍政权在经济上、军事上采取对美依附政策的同时,又不得不顾虑对以美国为中心的战后体制抱有敌意的右翼势力。然而,同时讨好美国和右翼是困难的。安倍政权没有办法解决这一矛盾。
(日本の右翼イデオロギーは、近代日本の侵略戦争や絶対天皇制を賛美する歴史修正主義に基づいて、戦後の国際的・国内的秩序を否定しようとするものです。こうした思想に基づく安倍政権の極右的な外交政策は、東アジアの国際関係を不安定にする、非常に危険なものです。それが、アジア各国だけでなくアメリカからも非難されるのは当然でしょう。ところで安倍政権は、経済的・軍事的にアメリカへの従属政策を採る一方、東京裁判を批判しアメリカ中心の戦後体制に敵意を持つ右翼勢力にも配慮せねばなりません。しかし、アメリカと右翼と両方を同時に喜ばせることは困難です。そして安倍政権は、この矛盾を解決する手段を持っていないのです。)

  《中国社会科学报》:根据您的观察,日本社会各阶层怎么看待安倍政权,进行了哪些批判? (『中国社会科学報』記者:日本社会の各層は安倍政権をどのように見、またどのような批判を行っていますか?)

  大田英昭:安倍政权的右翼思想脱离了战后日本保守势力的常识。安倍政权与中国和韩国为敌、让美国不快的极右外交政策和蹂躏立宪政治的强权政策,引发了日本国内其他政党甚至自民党内部的不满。安倍政权的极右意识形态、无视立宪政治的强权手法,引起了日本各阶层的强烈批判。
(安倍政権の極右思想は、戦後日本の保守勢力の常識からも逸脱するものです。中国や韓国と敵対しアメリカをも不快にさせる安倍政権の極右的外交政策や、立憲政治を蹂躙する強権政策は、自民党内部の不満をも引き起こしています。安倍政権の極右イデオロギーや、立憲政治を無視した強権的手法は、日本の各層の強い批判を引き起こしているのです。)

  安倍政权企图删除军事大国化的重要障碍——日本宪法第九条的有关条款。然而,根据舆论调查,大多数日本国民反对修改宪法第九条。在目前情况下,安倍政权无法修改宪法,于是便企图通过修改宪法第九条的解释,使得行使现在不被承认的集体自卫权成为可能。而且,安倍政权明确了不通过国会只由内阁会议决定来变更这一宪法解释的方针。
(安倍政権は、軍事大国化の大きな障害である日本国憲法第9条の戦力不保持条項や交戦権否認条項を削除することを目指しています。しかし、世論調査によれば日本国民の大多数が憲法9条の改正に反対しており 、安倍政権が現在改憲できる状況ではありません。そこで安倍政権は、憲法9条の解釈を変えることで、現在認められていない集団的自衛権の行使を可能にすることを、企んでいるのです。しかも政権は、この憲法解釈変更を、国会を通さずに内閣の閣議決定だけで行う方針をも明らかにしました。)

  然而,对于安倍政权这一破坏立宪政治的强权手法,自民党内部也有不少批判。根据舆论调查,对于安倍推动的通过更改宪法第九条的解释来允许行使集体自卫权,赞成者为26%,反对者为51%,对于不通过国会由内阁会议决定更改宪法解释的行为,反对者高达83%。
(しかし、立憲政治を破壊する安倍政権のこうした強権的手法に対しては、自民党内からさえも批判が少なくありません。(ANNの)世論調査によれば、安倍首相が進める憲法9条の解釈変更による集団的自衛権行使容認に対して、賛成は26%、反対は51%でした。さらに国会を通さず閣議決定で憲法解釈変更を行うことに反対する人は83%にのぼりました。)

  《中国社会科学报》:您认为,日本政治现状是否存在变化的可能?如果可能的话,实现这种变化的力量在什么地方? (『中国社会科学報』記者:日本政治の現状は変化の可能性があるとお考えですか?もし可能性があるとすれば、変化を実現する力はどこにあるとお考えでしょうか?)

  大田英昭:安倍政权以国会绝对多数为背景,表面上十分安定,但实际上基础脆弱。目前,安倍政权的支持率不足半数,但这是驱使媒体鼓动对“安倍经济学”的期待才勉强维系的状态。等到“安倍经济学”的破绽显而易见时,安倍政权恐将立刻陷入危机。然而这个时候,安倍政权可能将内政的失败转化为与外国关系的紧张,这是非常危险的。根据我的观察,众多日本民众正在展开尖锐批判安倍政权、拥护和平与民主的运动。
(安倍政権は、国会の絶対多数を背景に、表面上は安定しているように見えます。が、その基盤は実は脆弱です。安倍政権はメディアを駆使して「アベノミクス」への期待を煽ることで、かろうじて過半数足らずの支持を繋ぎ止めている状態なのです。「アベノミクス」の破綻が明らかになったとき、安倍政権は直ちに危機に陥るでしょう。しかしそのとき、安倍右翼政権は内政の失敗を外国との緊張に転化するかもしれません。これは非常に危険なことです。そこで日本の多くの市民は現在、安倍政権を鋭く批判し、平和と民主主義を擁護する運動を行っているのです。)

  日本的和平、民主运动,在日本共产党和社会民主党以外,还受到众多“无党派”民众的支持,并得到许多工会组织的参与。对安倍政权所推行的强权政策,日本民众的抵抗也日益强烈。针对去年12月安倍政权强行推动通过的《特定秘密保护法》,东京、大阪、名古屋、京都等全国十几个大城市都举行了大规模的反对集会。去年12月6日在东京举行的抗议集会就约有1.5万人参加。《特定秘密保护法》废止运动现也在日本各地不时持续着。
(日本の民主・平和運動は、日本共産党や社民党のほか、非常に多数の「無党派」市民によって支えられ 、多くの労働組合の参加を得ています。安倍政権が進める強権政策に対して、市民・労働者の抵抗が強まっています。昨年12月に安倍政権が強行成立させた「特定秘密保護法」に対して、東京・大阪・名古屋・京都など全国の十数の大都市で大規模な反対集会が行われました。昨年12月6日に東京で開かれた抗議集会には一万五千名が参加しました。秘密保護法廃止運動は現在も全国で定期的に続けられています。)

  《中国社会科学报》:基于您的学术观察,请您谈谈对于日本当前政治现状和发展趋势的整体判断。 (学術的観察に基づき、日本における現在の政治情勢とその発展の動向について、全体的な判断をお聞かせください。)

  大田英昭:目前,处于安倍政权下的日本政治特征,与自民党的主流不同,以右翼的支持为背景的势力掌握着权力。针对推行极右路线的安倍政权,以前的保守派中也出现了批判声音。日本的和平、民主势力必须同这些有良知的保守派联合起来,构筑包围安倍政权的统一战线,从而压倒右翼势力。从舆论调查的结果来看,这是完全可能的。
(目下、安倍政権下の日本政治の特徴は、従来の自民党主流とは異なり、右翼の支持を背景とする勢力が権力を握っていることにあります。極右路線を進む安倍政権に対して、旧来の保守派の中からも批判の声が現れています。日本の平和・民主勢力は、こうした良識的な保守層とも連帯しながら、安倍政権を包囲する統一戦線を築き、右翼勢力を圧倒せねばなりません。世論調査の結果を見れば、その可能性は十分にあります。)

  在任何国家,绝大多数民众都憎恶战争、追求和平。对于东亚的持续发展而言,和平是最低限度的必要条件。追求和平的东亚各国人民,必将能够跨越国界联合起来,压倒好战势力。我对此深信不疑。
(どこの国においても、圧倒的多数の民衆は戦争を憎み平和を求めています。東アジアの持続的発展にとって、平和は最低限の必要条件です。平和を求める東アジア各国の民衆は、必ずや国境を越えて連帯し、好戦的勢力を圧倒してゆくに違いないと、私は信じています。)

長春だより

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