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八重山教科書問題と石垣市長選――日本政府の後ろ暗い過去 [沖縄・琉球]

歴史修正主義の濃厚な「新しい教科書をつくる会」系の育鵬社版の公民教科書について、採用の押しつけを拒否している沖縄県竹富町。2月28日に安倍政権が閣議決定した「教科書無償措置法」改正案は、明らかにこの竹富町を狙い撃ちにしたものだ。

文科省はすでに昨年10月、竹富町に対してスラップ訴訟まがいの恫喝を構えながら是正要求を出すことを決めており、今月上旬にも育鵬社版教科書の採用を強要する方針を固めたという報道がつい先月流れたばかりだ。そして今回の閣議決定。

人口わずか4千人足らずの竹富町の教育行政に対して、なぜ政府はかくも異常な執念を燃やして政治介入を行おうとするのか?竹富町の位置する八重山が、尖閣諸島と隣接し(行政上は八重山の石垣市に属する)、日米中のパワーゲームにおける要の場所にあるというその地政学的位置が、この地域の教育に対する安倍右翼政権の異常な関心と関係しているのは確かだろう。さらに政権はこの八重山教科書問題を、教育の国家統制を一気に進めるための梃子として利用しているのかもしれない。

ところで、日本政府は「琉球処分」直後の1880年、宮古・八重山諸島を清国に引き渡す代わりに内地通商権などを得る「琉球分割条約」を自分から清国に持ちかけてこれを締結し、調印寸前までいった過去がある(条約の締結をいったん認めた清国が土壇場で調印を渋ったため、事なきを得た)。いわゆる「国益」と引き換えに日本政府が宮古・八重山を外国に切り売りしようとした歴史的事実は、永久に消えることがない。

政府は今、この後ろめたい過去を隠しながら、中国との軍事的最前線だと騒ぎ立て、八重山住民にナショナリズムを注入しようしている。だがいざ事が起これば、政府が八重山住民をどこまで本気で守るかは疑問だ。沖縄、とりわけ八重山が、日本の「国益」のために再び捨て石にされてもおかしくない。

今日3月2日は石垣市長選の投票日だ。昨年12月決定の防衛計画の大綱で南西諸島の防衛体制強化を打ち出した政府は、陸上自衛隊の新たな警備部隊を石垣市に配備することを検討している。これを報道した『琉球新報』に対し、防衛省が露骨な圧力を加えたことが明らかになった。石垣市に100億円基金の利益誘導を行った自民党の石破幹事長もまた、同紙を公然と批判している。保守系候補を当選させるためになりふり構わぬ政府・自民党のやり方は、中国との軍事的緊張を政権浮揚の梃子にしようと企む彼らの危険な手口と結びついているのだろう。

「アベノミクス」やらオリンピックやらのどさくさに紛れて、この国を乗っ取っている右翼政治家たち。彼らの政権が一日永らえるごとに、この国は一歩破滅へと近づく。そのとき真っ先に犠牲にされるのは沖縄、とりわけ八重山だ。

「教科書は採択地区内で統一 無償措置法改定を閣議決定」『琉球新報』2/28
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-220405-storytopic-238.html

石破茂「石垣市長選など」HUFFPOST JAPAN, 3/1
http://www.huffingtonpost.jp/shigeru-ishiba/ishigaki-island_b_4878217.html

タグ:八重山 沖縄

長春だより

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