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「打鬼子」と「打貪腐」――中国の二つの官製ゲーム [日中関係]

2月27日、『人民日報』の微博(ウェイボ、中国版SNS)が新しいネットゲームを発表しました。その名も「打鬼子」(鬼子を撃て。鬼子は日本侵略者の意味)。その内容は、靖国神社に祭られている十四人のA級戦犯から一人を選び、その戦犯の似顔絵が描かれた的にマウスで照準を合わせて撃つ、というものです。
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このゲームに対しては中国の多くのネットユーザーから冷淡な反応が寄せられています。私もやってみましたが、実在の人物の顔を狙うというのはさすがに抵抗感があります。

実は先月、同じく『人民日報』のSNSは「打貪腐」(腐敗官僚を撃て)というゲームを出し、話題になりました。収賄・公金横領・職権乱用・淫行という四タイプの官僚が次々と窓から現れ、それをマウスで狙って撃つ、という内容です。昨年から続く党・政府の反腐敗キャンペーンの一環として作られたものでしょう。
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実際、特権階級の腐敗に対する民衆の怒りのマグマは、すさまじいものがあります。官・財界の大物が汚職で逮捕されるたびに大きな拍手が沸き起こりますが、しかしそうした表面に現れる個々の腐敗の背後に、政治・社会の構造的な問題があることは、多くの人が知っています。

日中間の歴史認識をめぐる懸案として、A級戦犯の靖国合祀問題や領土問題に焦点があてられていますが、そうした現象の背後には、日本の戦争責任がいまだ清算されておらず、その結果として東アジアの戦後秩序がいまだ確立されていないという問題があります。中国の多くの民衆は、日本軍が過去に犯した戦争犯罪(を体現するA級戦犯)に対する憎しみからだけではなく、東アジアの新しい平和的秩序をつくってゆく大前提として、過去の侵略戦争に対する明確な謝罪と清算を日本に求めているのだと、私は思います。

反腐敗にせよ、A級戦犯問題にせよ、官製メディアの取り上げ方と一般民衆の見方との間には、どこか微妙なずれがあるように見えます。二つの官製ゲームに対する人びとの意外に冷めた反応が、そうしたずれを表しているように思えます。

東アジア各国の政府間(あるいは支配層間)の対立と妥協の演出に惑わされてはならないでしょう。民衆同士がいかにしてお互いを理解し、手を取り合って平和的秩序を創り出してゆくか。この困難な道を乗り越えることに、東アジアの平和な未来は懸っていると、私は信じます。

長春だより

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