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査干湖の「冬捕」――前ゴルロス・モンゴル族自治県にて [中国東北・雑記]

東アジア史関係の会議に参加するため、吉林省と黒竜江省の境界にある前ゴルロス・モンゴル族自治県に行ってきました。同自治県の総人口58万人のうち、1割ほどがモンゴル族で、最大多数の漢族のほか、満州族、回族、朝鮮族、シベ族などの少数民族が暮らしています。

この地にはその昔、モンゴル系の契丹族が建てた遼国の拠点の一つとして1022年に塔虎城が築かれました。周囲5km以上に及ぶ城壁跡や、建築群跡などの遺跡が今も残っています。やがて付近の大草原はモンゴルの一支族ゴルロス部の故地となり、17世紀に入り女真(満洲)族の建てた清朝に服属して、ゴルロス前旗が設置されました。その後、中華民国・「満洲国」の時期を経て、現在は吉林省松原市に属する自治県となっています。

ゴルロスとはモンゴル語で川を意味します。その文字通り、県内には東北大平原を貫く大河として著名な松花江のほか、大小さまざまな湖沼が草原の中に点在し、水産資源が豊富です。うち最も大きな湖が査干湖で、今回はそのほとりの宿泊施設で会議が行われました。

査干湖は水面面積345平方km、琵琶湖の半分くらいの広さで、漁業資源の豊かな湖として有名です。とりわけ全面結氷する冬季、12月中旬から翌年の春節前まで、分厚い氷を破砕して行う伝統的な漁法「冬捕」は、中国の無形文化遺産に登録されています。この「冬捕」は、遼(10~12世紀)の皇帝が査干湖に行幸した際にも行われたことが史書に記されているほど、長い歴史をもっています。
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一昨日、全面結氷した査干湖の中央部まで車で走り、「冬捕」を見学してきました。水平線の彼方まで果てしなく氷雪の広がる湖の真ん中で、漁民たちは厚さ1~2メートルもある湖面の氷に一定の間隔で穴をうがち、長さ数百メートルの巨大な網を入れ、数頭の馬を動力にしたウインチで網を引き絞りながらゆっくりと引き揚げます。すると網の中から大小無数の魚が現れてぴちぴちと跳ね上がるのです。氷点下20度、魚たちは数分のうちに凍り付いてゆきます。極寒の風が吹き付けるなか、この神秘的な光景に、寒さも忘れてしばし見惚れました。

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会議の後の夜、鯉・レンギョ・コクレンなど査干湖のさまざまな魚料理をいただきました。大きい魚は70センチほどもあり、どれも臭みがなく、淡泊な味わいです。羊の丸焼きをつまみにコーリャン酒をしたたか飲まされ、その夜は前後不覚となりました・・・
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長春だより

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