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中国・東北地方の激烈な大気汚染 [中国東北・雑記]

ここ数日間、長春市内は史上最悪の大気汚染で大騒ぎとなりました。先週来、市内は火事場の煙が一日中立ちこめているような状況で、日が暮れるとこの煙に街灯や車のライトが乱反射するという、不気味な光景が現れます。

今年の年初に起きた大気汚染騒動以来、天気予報と同じように大気汚染情報をネットでチェックするのが日課になってしまいました。今日はマスクが必要か、街歩きしても大丈夫かを、それによって判断するわけです。大気汚染度のレベルは、「優」「良」「軽度の汚染」「中程度の汚染」「重度の汚染」「深刻な汚染」という6段階ありますが、先週から「中程度の汚染」と「重度の汚染」とを行ったり来たりという状態で、私も街歩きをなるべく控えてきました。

それが21日から状況はさらに悪化、中国東北地方の各都市は「深刻な汚染」レベルとなりました。21日午後1時の長春市内のPM2.5 の値は457μg/㎥(日本での「不要不急の外出を避ける」暫定基準値は85μg/㎥)、22日の午前10時には692μg/㎥に達しました。晴れて太陽は出ているのに、濃い霧がかかっているかのような状況です。大気汚染指標のAQIは値が300を超えると「深刻な汚染」レベルに達しますが、21日から23日にかけて長春市内は観測限界値の500を超えて測定不能になってしまったという、猛烈な汚染。報道によれば、東北地方各地の汚染は過去最悪を記録したそうです。長春市内の病院では呼吸器疾患の患者が20%増加したという報道もありました。
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【写真は21日午後3時過ぎの長春市内。太陽の光も弱々しく、まるで月のようです】

長春では先週から全市の暖房システム(市の暖房会社がパイプラインで湯を各建物に供給する)が起動し石炭が焚かれ始め、加えて少雨・無風などの気象条件が重なるなどして、ひどい汚染現象が起きたと、市の環境当局は説明しています。

中国の急速な経済成長は社会にさまざまな問題を引き起こしていますが、大気汚染もその一つです。経済成長に伴い中国でも拡大してきた中所得階層の市民たちは、特に健康問題には敏感で、自身と家族の健康に直結する大気汚染の改善を強く訴えはじめています。すでに北京市では、車の通行規制など緊急の大気汚染対策が最近始まりましたが、それも市民の間に高まる不満が政府に向けられるのを恐れてのことでしょう。他方、環境規制の強化は、すでに減速傾向にある中国の経済成長をさらに鈍らせる恐れもあります。現政権が民衆の支持を調達するには経済成長の持続が不可欠である一方、経済成長に伴う諸問題が今度は民衆の反感を高めつつあるという矛盾の中で、政権は困難な舵取りを迫られているわけです。

23日の朝から降り始めた雨のおかげで、汚染物質もかなり洗い流されたらしく、ようやく大気汚染指標の数値も落ち着いてきています。とはいえ、市民の間に蓄積しつつある不満のほうは、そう簡単に洗い流されるものではないでしょう。

長春だより

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